あれだけ言ったのに
今更になって、「これはファティマタさんたちの活動ですか?」と問い合わせが来てる。
なんのこっちゃ??とリンクを見ると、
つい最近TwitterでUPされた『ガーナのよさこい祭り』の動画が話題になりいろんなメディアで取り上げられているではないか。
話題の動画はこちら
え、、今さらですか。。
我々は2年前と3年前にガーナ現地でのよさこい祭りに参加した。(理由はあとで。)
現地の子供たちの身体能力やリズム感のレベルの高さに度肝を抜かされたことを覚えている。
ダンスのベースがまさにアゾント・アフロビーツ(Azonto Afrobeats)そのものなのだ。
そして、私は散々SNSで吠えた。
日本の運動会で踊っている子供たちのレベルをイメージしてダンスを教えに行くつもりでガーナに行ったが、子供たちのダンスのスキルの高さに衝撃を受け、立場が急に逆転し、ひとつでもその動きを盗めないものかと必死にスマホを構えたほどだ。
「しょせん一般の子供たちのダンス」とたかをくくって興味も示さなかった日本のダンサーたちにも、この事実を伝えたかった。
ガーナのよさこい 想像とのギャップ
2014年、ガーナで10年以上続いてきたよさこい祭りがだんだん縮小されて、参加者も減っている。
という噂を聞いた。
ガーナでよさこい祭りがあること、しかもそれが10年以上も続いていることに驚いた。
アフリカにゆかりがあるFATIMATAと、よさこいを愛する高知県人HEMOが2人で何かできることはないかと、使命感に燃え、『Japan Yosakoi Ren(ジャパンよさこい連)』というよさこいチームを立ち上げた。
そして、2015年に踊り子を募ってガーナのよさこいにチームとして参加した。
もちろん、参加の目的は元気がなくなっているよさこいのお祭りを盛り上げに行くこと。
その活動の中には、鳴子の使い方や、よさこい正調のダンスのワークショップなども含まれていた。
『日本のお祭りの魅力をもっと知ってもらおう!』という趣旨のものだった。
クラウドファンディングでの資金調達も達成し、我々は『文化を伝えに行く』という使命感を背負って日本を出発した。
『ダンスを教える』『文化を伝える』『異文化交流』というだけで、なにかとても有意義な活動に聞こえるし、それだけで社会貢献だ。
気合いも入る。
だが、蓋を開けてみると、ガーナの子供たちは我々が思っているほど、我々のダンスの指導をさほど求めているようには感じなかった。
そもそも、ガーナの子供たちはとっくにダンスも上手に踊れるし、我々日本人なんかよりダンスの楽しみ方を十分知っている。
我々が意気揚々と掲げていった目的は、ただの『思い上がり』でしかなかったのか?と思い描いていた想像とのギャップに焦りを隠さずにはいられなかった。
『与える』のではなく『共有』する
このままでは帰れない。。。
応援してくれている日本のみんなに、なんと報告すればよいのか。
そこで私たちは、考えあぐねた結果、発想の転換をした。
来てしまった以上しょうがない。開きなおろう。
そして、原点に戻った。
なぜ、そもそもよさこいなのか。
ガーナのよさこい第一回目に、現代よさこいのパイオニアである方がガーナに訪れた。
そこで子供たちから質問されたそうだ。
「よさこいとはどういう意味ですか?」
そこでこう答えたそうだ。
良い世さ来い。
その記事を何かの新聞で読んだ時に鳥肌が立った。
現代よさこいとは、トラディショナルの正調の中にジャズやサンバなど、黒人のルーツでもある音楽やステップを取り入れて、自由に踊るところから始まった。
ルールはよさこい正調がどこかに一節でも入り、手には鳴子を持つこと。
それ以外は楽曲は何を使っても良いし、自由に踊ってよい。
奴隷貿易を強いられていた遠い遠い昔のアフリカの先祖たちが「自由を手に入れたい、良い世の中になって欲しい。」というの魂の叫びから生まれた音楽やステップが、現代に日本のよさこいに取り入れられ、そしてまた故郷であるアフリカに帰って来たのだ。
ガーナの子供たちはそんなことを知る由もなく、鳴子を持って自由に踊っている。
それでいいのだ。
見えないところで繋がる魂の方が大事なのだ。
私たちも自分らしく、楽しく踊る。
それが共鳴することの方が大事なのだ。
そして、我々も子供たちと同じように、とにかく楽しんで踊ることに思考をシフトチェンジした。
奇跡の化学反応が起きた!
私たちがアフロビーツを取り入れた楽曲の演舞を楽しそうに踊りはじめると、あれだけ『教わる』ということに興味を示さなかった子供たちが、反応しはじめた。
演舞を終えるとアンコールがかかった。
そして次から次へと、子供たちが駆け寄り、同じようにマネして踊りはじめたのだ。
マラカスを鳴らすように、鳴子をカチャカチャならし、みんながアフロビーツの曲に合わせて「よっちょれよ」の動きを一緒に踊る。
よさこいが私たちを繋げた。
心が感動で震える瞬間だった。
GIVEやTAKEの関係ではなく、楽しいという感覚に同調してその空間をSHAREをしたのだ。
それが祭りであり、よさこいだ。
誰も予測できなかった。
Youtubeを見て想像する世界とは大違いだった。
そして、主催者からは近年に見ない盛り上がりだった、と告げられた。
そして、翌年もぜひ来て欲しいと言ってくれた。
ガーナと日本人の混合チームの発展へ
我々の活動はSNSや報告会を通して広まり、いろんな国からのオファーもいただいた。
翌年の2016年は国際交流基金から助成金をいただき、『Japan Yosakoi Ren(ジャパンよさこい連)』の参加者は前年の倍となった。
そして、2017年には『Japan Yosakoi Ren』はガーナのよさこいでは珍しい、大人と子供のガーナと日本人の混合チームとして発展していった。
Japan Yosakoi Ren ジャパンよさこい連
百聞は一見にしかず。
たまたまバズったTwitterのガーナのよさこい動画。
『彼らのクールでキレキレのダンス』は今に始まったことではない。
以前からの独自のムーブは入っていたし、進化したのは、彼らのよさこいではなく、アゾントのスタイルが進化してるだけであり、よさこいは昔から自由な踊りを踊るという意味では、何も変わってない。
あれだけバズったTwitter動画でも、本当のかっこよさは伝わりきれてないと思う。
あの動画を配信した日本人の方も、おそらく同じ思いでいるだろう。
あの場にいないと感じられない、想像を超える世界だ。
自分が『価値』と思いこんでる価値観すら覆されてしまうのだから。
それが、アフリカだし、旅の素晴らしいところなのだ。
教えようと思って準備して出ていったら、教えられて帰ってくるのが旅である。
だから、Japan Yosakoi Ren (ジャパンよさこい連)の活動はわざわざ旅をすることに重きを置いているのだ。
新しい価値観を切り拓く、そのお手伝いもJapan Yosakoi Ren (ジャパンよさこい連)はしていきたい。
だから、もっと仲間を増やして、ぜひみんなでガーナのよさこいに参加したいのだ。
今回のTwitter動画はそういう意味においては、とても良いキッカケになったかもしれない。