ファティマタセネガル物語

ファティマタセネガル物語(1)〜何度も大嫌いになった第二の故郷〜

巨大ホストクラブ

西アフリカ、セネガル。

美男美女が多く、とてもオシャレで音楽とダンスの盛んな国。

2003年。

私のセネガル渡航の目的は伝統舞踊「サバールダンス」の習得だった。

私はプロダンサーとしてのプライドと情熱を掲げ、3回目のセネガル渡航を果たしていた。

私は自分に約束した。

「セネガルに行ってもイケメン男性に振り回されないないぞ!」と。

 

その当時、まだまだ情報の少ない私たちの中には、未知の世界のセネガルへダンスの修行に行き、魅惑たっぷりの現地の男性に口説かれ、言われたままにその男性を日本に連れて帰って来てしまう人たちが多かった。

ウソみたいな話だが、狭い世界なだけにそういう旅行者がいれば、その噂はすぐ耳に入る。

 

私も初めてセネガルに行った時は、その一人になりかけるところだった。

私が現地である男性に口説かれ、うっかり自分を見失っていた所を、たまたま現地をよく知る日本人女性に遭遇し、その方の忠告のお陰で危うくその失態からは免れることができた。

セネガルに来ると女性だったら誰もが簡単に口説かれる。

でも、その口説いてくるセネガル人の目的が、その女性ではなく海外へ出るための手段であることが多い。

(全てではないともちろん信じているが。)

先進国の人は海外ならどこにでも簡単に行くことが出来ても、後進国の人はそうはいかない。

チケットを買うためのお金がないのはもちろんだが、海外へ入るためのビザを取ることが極めて難しい。

ビザを取得するいちばん手っ取り早い方法は外国人女性と入籍することだった。

セネガルの失業率は高い。

仕事がない彼らにとって先進国に出て働くことができれば成功したも同然。

一家の出世頭として故郷へ錦を飾れるものだと誰もが信じていた。

そういう理由から、先進国の女性を見れば、その人がどんな年齢、容姿であろうとセネガル人は言葉巧みに口説いて来る。

私もその対象のひとりなのだ。

しかも、セネガルはアフリカの中でも美系が多い。

顔は小さく、背が高くてスタイルもよい。

その上、アフリカの中でもっともオシャレと言われている。

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持ち前の美貌を引き立たせる洗練されたファッションセンスは、リゾート気分で気が抜けている私たちのラフな格好を恥ずかしく思わせてしまうほどだった。

そんなイケメンたちから、会ったその日から超スウィートな言葉で口説かれるのだ。

私たちがどんなにスッピンであっても「この世で一番美しい。」と褒め、「君を好きになってしまった。」と髪をなでる。

「もう、君のことしか考えられない。」と見つめ、「君のためなら、どんなに辛いことがあっても頑張れる。」と手を握る。

時には愛の歌を作り、大事に身に付けていたアクセサリーまで外してプレゼントする。

そしてクライマックスは「君と一緒に日本で暮らしたい。」、「君と離れるのが辛い。」と頭を落とし目頭を押さえる。

長期で仕事を休んでセネガル旅行に行くために、同僚や上司にゴマをすり、嫌な仕事も笑顔で引き受けたくさんの根回しをしてきた。

派手な遊びも買い物も我慢して、生活を質素に抑えコツコツお金も貯めて来た。

アフリカという開放感の中で、毎日イケメンから「アイラブユー」を浴びせてもらえるの夢のような甘い日々。

もしあなたが独身で、そこそこの収入があり、10も歳下のこのイケメンたちから「離れたくない」とすがられたら・・・。

 

思考はニブるよね?

 

私はニブる。

 

そこでまたひとり、セネガルという巨大なホストクラブの若いツバメに、人生を捧げてしまう外国人女性が生まれてしまうのだ。

 

最後と決めたセネガル渡航

私は2003年のこの3回目のセネガル渡航を最後にしようと決めていた。

今回の旅だけは、ダンスの習得だけに集中し、どんな誘惑があっても私の大事なダンス人生を台無しにするような失態は起こさないと肝に銘じてセネガルに訪れた。

私の目的はサバールダンスの習得であり男ではない。

不誠実な誘惑に自分を見失うような醜態はもう二度とさらさない。

この歳で独身なのは好きなことを極めて来たからであり、彼らの演技が見抜けないほど恋愛経験が少ない訳ではない。

 

その強い意志のお陰で、どんなにイケメンに口説かれようとも見向きもせず、ダンスの習得だけに一心不乱になれるセネガルの旅になった。

2ヶ月の滞在。

ダンス習得の目的を達成し、残り数日で帰国のところまで来ていた。

本当に順調なセネガルの旅だった。

 

 

しかし、帰る直前にまさかのアクシデントを起こしてしまった。

うっかりしていた。

事もあろうに、私はひょんなタイミングでセネガル人に恋をしてしまったのだ。

それも、ダンスとは全く関係ない、インターネットカフェで働いていたお兄さんだった。

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ファティマタセネガル物語(2)へつづく・・・

 

 

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