ファティマタセネガル物語

ファティマタセネガル物語(10)〜何度も大嫌いになった第二の故郷〜

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セネガルの朝

外がやかましくて目を覚ました。

羊やニワトリの鳴き声、子供たちが遊ぶ声、コンクリートの建物の中では廊下の話し声も響いて聞こえてくる。

隣には上半身裸のゼイヌがうつ伏せになって寝ていた。

紛れもなく隣にいる。

しばらく彼を見つめた。  

黒く引き締まった背中。

背骨の溝から肩甲骨にかけて盛り上がった筋肉。

キュッと細くなったウエストからプリっと突き出たお尻。

ゼイヌの肩甲骨を枕に、頭をちょこんと乗っけてその黒い曲線美を眺めながら手の平でなぞった。

私がどんなに触ろうと、ゼイヌは全く起きる気配はない。

しばらして、私はベッドを降り窓を開けて外の景色を見た。

真っ青の空の下、四角いコンクリートの家が並ぶ簡素な町並み。

屋上の洗濯ロープに干してある色とりどりのセネガルクローズが空の青に映えとても華やかでキレイだった。

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路上では、子供たちがボールを蹴って遊んでいる。

 

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なんてのどかな町。

 

用心棒のヤマちゃん登場

 

私は部屋を出て顔を洗い、人の話し声がする居間の方へ行ってみた。

そこにはベンジーの他に2人の女性がいた。

「おはよう。よく眠れたかい?」とベンジーが立ち上がり、2人の女性を紹介してくれた。

ひとりはベンジーの妹のカディ。

このアパートの屋上にあるフィットネススペースの事務をやっている。

もうひとりはヤマ。

19歳の女の子だった。

「この家の中で何か困ったことがあればヤマに言ってくれ」とベンジーはヤマの肩をポンポンと叩いた。

ヤマはウィンクをして親指を立てた。

ヤマは昼ごろになるとベンジーの家に現れ、タバコを吸っている不良少女だった。

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昼も夜もベンジーの家でご飯を食べ、タバコをもらうかわりにベンジーのパシリをしていた。

その日もベンジーからお金を預かると、空のナップサックをしょって出かけて行った。

しばらくするとナップサックをパンパンにして帰って来て、中からたくさんのアルコール類を取り出し、せっせと冷蔵庫へ運んでいた。

彼女は一体ベンジーのなんなんだろう。

だけど、そんな不審さも感じさせないほどヤマは男勝りで正義感が強く、ベンジーのパシリ以外の時は私の用心棒のとしていつでも私のそばにいるようになった。

ヤマは一見クールに見えたが、とても人懐っこく、私がスーツケースを開けるたびに勝手に物をひっぱり出しては「これは何?」と質問してくる好奇心旺盛な子だった。

 

ゼイヌとのセネガル生活スタート

 

お昼を過ぎて、ようやくゼイヌが起きて来た。

彼は居間へ入ってくると、軽く挨拶をして、たばこを吸いながらテーブルに置いてあった私のケータイをおもむろにいじり出し、ゲームを始めた。

私は彼の横に座り、「シーベルは?」と聞いた。

彼はタバコをくわえながら一言「やめた」と答えた。

私と一緒にバカンスを過ごすために辞めたのだと。

ケータイのゲームに夢中になっていた彼の手が突然ビクっと動き、舌打ちをした。

待ちに待ったGAME OVER。

彼はケータイをテーブルの上に置き、ソファーにもたれながらこっちを見た。

やっと私を見てくれた。

私も彼の方に向きかえった。      

そして彼は「サヴァ?」と一声掛け、今度はテレビを見始めた。

彼はほとんどの時間、居間のソファーに座ってテレビを見るか、私のケータイでゲームをしていた。

 

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そして夜中になるとベンジーとビールを飲み出し、男同士の世間話に花が咲く。

ベンジーが睡魔に勝てず、寝るために部屋に戻ると、ゼイヌはひとり居間に残っていつまでもビールを飲みながらテレビを見ていた。

私はそんな彼の生活パターンに最初は黙って付き合っていたが、そのうち疲れ、先に部屋に戻って寝てしまうことが多かった。

朝、目を覚ますと彼は決まって私の隣で上半身裸でうつぶせになって寝ていた。

 

彼がこんなに近くにいるのに、近くにいる気がしない。

 

私たちが去年チャットしていた時は、彼はバスケットボールの練習に頻繁に行っていると言っていた。

そして私がセネガルに来たらバスケの試合に連れて行くと張り切っていた。

それを聞いていつも妄想していた。

 

私は彼の仲間たちに紹介され、試合が始まるとベンチでタオルを振り回して応援するんだ。

だけど、私がセネガルに来てからは、ゼイヌはバスケの練習に行っている様子はなかった。

いつも彼が夢中になっているのは、ケータイのゲームかテレビだった。

 

恋という病

私は彼がテレビに飽きて次のアクションを起こすのを待った。

とても聞きたいことがあったのだ。

私は恋愛の駆け引きにおいて言ってはならない減点ワードを言わずにいられない状況だった。

もう、我慢の限界。

彼が立ち上がって、シャワーを浴びに行こうとしたところを引き止めた。

 

「ねぇ、私のこと好き?」 

 

聞かないで後悔するより聞いて後悔する方がよい。

泣いても笑っても私はここに2ヶ月しか滞在できない。

いや、2ヶ月も滞在しなければいけない。

 

彼はクスっと笑って大きな手で私の頭を自分の胸にグイっと引き寄せた。

 

「当たり前だろ。」

 

一瞬にして今までの不安が吹っ飛んだ。

その言葉と白いシャツに似つかわしくない胸元の香水の香りが、モヤモヤしていた私の気持ちを再び燃え上がらせてしまった。

 

ファティマタセネガル物語 第11話につづく。

 

動画で見るセネガルってこんなところ

動画はFATIMATAが主宰するセネガルツアー。
ツアーの途中で日本に帰る参加者をみんなでお見送り。
が、歌が始まり踊りが始まり、なかなか帰れない。
そしていつもチェックアウトギリギリになるという。
誰かが帰る時はいつもこんな感じ。

 

 

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