セネガルのスーパースター
私のサバールダンスの師匠は、セネガルの中でもトップダンサーのパムサ。
セネガルではダンサーも歌手と同じくらい社会的地位があり、芸能界の中でもダンサーというポジションで国民的スターが存在している。
パムサはダンス一本(歌わない)だけでその地位を確立したスーパースター。
彼を目指すたくさんの若手のダンサーたちが、彼の元へ弟子入りしている。
でも、その弟子たちがパムサになれないのはなぜだろう。
【Eテレで踊ったパムサの映像】
こっそり教えてくれたスターであるために守るべき6つのこと。
私がパムサと出会ってから12年経ったある時、そのチャンスは訪れた。
パムサはダンス以外のことも出し惜しみなくいろんなことをたくさん教えてくれる。
それでもやはり今までの私たちには言葉の壁があった。
パムサが話す言葉はセネガルの部族語【ウォロフ語】。
パムサからもっともっと知りたい事は、ダンスの技術はもちろんなのだが、パムサがパムサでいるための精神的なこと、もっと内側の話が聞きたかった。
自分が尊敬する師匠と精神面の深い話をする。
それが私の夢でもあった。
そしてその日が訪れたのだ。
日頃のウォロフ語の学習がやっと実を結んだ日だった。
それは、誰も教えてくれないような、彼が守っている【スターであるための奥義】だった。
彼は言った。
「日本でセネガルダンスを伝える代表者として、ダンサーとして仕事を得るために、これらのことを守れ。」と。
それは、6つあった。
3分以上踊るな。
これは日本のクラブシーンにパフォーマンスで出演した時の話。
日本のクラブシーンでのダンスパフォーマンスの長さは1チームだいたい5分程度。
今ではいろんなネタを盛り込み、人数の多いチームや大御所と言われているチームは10分くらい踊るところも増えた。
そういう風潮の中、ネタを3分に抑え込む方が逆にひんしゅくではないか?と思ってしまう。
ギャラをもらってゲストパフォーマーとして呼ばれて、3分しか踊らず帰るのはギャラ泥棒だろ。とつい思ってしまうのだ。
その考えがそもそもの間違いだとパムサは言う。
質の高いパフォーマンスを短く。
それが彼のスタンス。
見せすぎて満腹にさせるのは逆効果。
美味しいものを少量で。
「もっと食べたい!おかわりしたい!」という欲求こそが見ている人の記憶に残り、リピーターになる。
そこで満腹にさせてしまったら、それまでだ。と。
そして、彼のパフォーマンスは全くその通りになっていた。
クラブでのパフォーマンスはたったの2分半。
だからと言って、「短い!」と怒る者は誰もいなかった。
逆に、あっという間に終わってしまったパフォーマンスの余韻に浸る者の方が多かった。
それは、もっと見たいという欲求が、私たちの脳裏に残ってる彼らの映像を何度もリピートさせていた。
そして、彼らは私たちの忘れられないダンサーになった。
持っている物は全て与えろ。
私も指導者の立場。
パムサは言う。
「今、持っている技術は全て与えろ。」
出し惜しみをするな、ということだった。
全て出し切ると、新しいものが入って来る。
そして、全て与えることが出来るということは、生徒の成長を望んでいるということ。
生徒の成長を望まずして指導者にはなれない。
生徒の成長は自分への成長へもつながる。
それが出来ないヤツは、指導者になる資格はない。
なるほど。
パムサの指導を毎年10年以上受けているが、毎回新しいから飽きることがない。
内容もそうだが、先生自体が進化している。
だから、他のダンスに飽きが来ても、パムサが教えるダンスは飽きることがない。
そのレベルは【サバールダンス】というジャンルすら越えている。
エンターテインメントの精神だ。
人を楽しませるためのクリエーションが見る度に鮮度が増している。
だから、終わることなく学び続けてこれる。
いつも忙しく見せろ。
自分の仕事が終わったら帰れ。というもの。
パムサは海外遠征が多い。
いろんな国へ飛び回る。
アフリカ人に多く見受けられるのが、招へいされたその国に居座ってしまうこと。
なぜなら、自国にいるより海外で稼いだ方が金になるからだ。
それに、アフリカから海外へ出るビザ(査証)を得る事が難しい事と、アフリカの彼らからしたら旅費も莫大。
これらの要素を考えたら、海外に入国できたこと自体が大きな成功。
目的の仕事を終えても、長期滞在したいと思ってしまって当然である。
しかし、パムサはの考えはこう。
「そこをガマンしろ。」
仕事が終わったらサッサと帰れ。
スターは、次のスケジュールが詰まっていなければいけないのだ。
余暇をのんびり過ごしている暇はない。
そう自分に言い聞かせて、留まりたくてもパッとその場を去る。
それは『ショウタイムは3分で。』と考えは同じ。
忙しくて捕まらない人ほど、その人に割いてもらう時間の価値は高いものになる。
そして、また呼びたくなる人になる。という。
余裕でいろ。
焦っても、必死であっても、それは見せるな。
これは一緒に仕事をした時にパムサが私に言った言葉。
一緒にした企画が大赤字を出した時があった。
私が、「どうしよう。」とうろたえていると、彼は言った。
「今まで通りでいろ。自分がマイナスになっても、サービスをケチるな。」
どんなに自分が辛くても、外には笑顔を見せろ。陰で泣け。
スターはどんな時でもスターでいなきゃダメだ。
それがファンへの信頼関係だ。
信頼は壊すな。
だから、いつでも余裕でいろ。
誹謗中傷は勲章にしろ。
スターはいろんな人からのやっかみも多い。
それをいちいち気にしていたらスターはやってられない。
目立つことが職業である。
上げ足を取るために、スターの言動をいちいちチェックする人たちも増える。
それこそが、スターの証なのだ。
私がパムサと一緒にセネガルツアーの仕事を始めて、それが軌道に乗り、そのツアーがメディアに紹介されるなどして有名になはじめた頃、パムサの元へたくさんの電話がかかって来たそうだ。
その電話とは、そのツアーの成功を妬んだ同業者たちが、私とパムサの関係を壊すような、根も葉もないウソを並べるというもの。
それをわざわざ国際電話でセネガルにかけてくるそうだ。
その度にパムサは私の成長ぶりを喜んだ。と言う。
言動を気にされる存在になれ!
facebookのコメント欄に「.」ひとつ打っただけで、その解釈をいろいろ議論される存在にならなければスターじゃない。
自分を信じろ。
自分が唯一無二であることを神に感謝せよ。
神は人それぞれに、その人にしかない能力を与えてくれた。
それを信じるか信じないかだ。
どんな人にも、誰よりも長けている能力があるのに、みんな有能な人をマネしたがる。
俺のようになりたいと、俺のことをマネしようとする人はたくさんいる。
その人たちには、自分が持ってる技術は全て与える。
だけど、忘れるな。
誰も、俺にはなれない。
だれも俺になれないのと同じように、俺もお前にはなれない。
それは、お前が唯一無二だからだ。
自分は自分でしかない。
だから、自分の能力を信じろ。
人間は完璧じゃない。
これら6つの【スターであるべき守ること】を教えてくれたパムサであるが、
実は、このパムサもダンス以外はゲームばかりして、お菓子ばかり食べているやんちゃ坊主なのだ。
いたずら好きでもあり、その場に居合わせた特徴的な人の顔マネをしては、周りをドキドキさせる。
どんなにスターでも、人間味が溢れているからみんなに愛されるのだ。
(ちなみに、私が着ているジャージは頂き物。)
どうだろう。
私たちも、大なり小なりスターなのだ。
それを信じることが大事なのだと思う。
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