ファティマタセネガル物語

ファティマタセネガル物語(3)〜何度も大嫌いになった第二の故郷〜

ファティマタセネガル物語(1)はこちらから

 

セネガルでの生活

私はセネガルではスキを見せないように心がけていた。

私は所詮セネガル人からすれば先進国の外国人。

お金持ちなのだ。

言葉巧みに近づいてくる人は男性だけではなく、女性も多かった。

「マイフレンド、マイフレンド。」と調子良く近づいて来る人たちは、こちらが少し気を許したとたんに困りごとが発生し、深刻な顔をして「お金が必要なんです。」と相談に来た。

一番多いのが、家族の病気。

子どもが熱を出した、親が怪我をした系の困りごと。

病院に連れて行きたいがお金がないから助けて欲しい、というのが多かった。

急な事態に最初はこちらもビックリして、出来る限りの援助をしていたが、それがあまりに立て続けに続くと、なんとも信じ難くなる。

それらが同情を誘う作り話だとしたら、許せない。

私はただの金づるのカモではないか。

だんだん人間不信とイライラが募り、ついには彼らに渡すお金が手切れ金と変わっていった。

 

ファティマタセネガル物語

 

そんなことが頻繁に続くと、誰も信用できずセネガルでの生活に気が滅入っていった。

そういう時に私が一番心落ち着ける唯一の場所はインターネットカフェだった。

セネガルではシーベルという。

シーベルに行けば、インターネットで日本語に触れることができる。

異文化に疲れた時は友達からのメールが気分転換になった。

私は一日何度もシーベルに行くこともあった。

 

ファティマタセネガル物語

 

インターネットカフェのお兄さん

シーベルに行くと必ず顔を合わすお兄さんがいた。

彼の名前はゼイヌ。

そこのシーベルで働いていた。

 

ファティマタセネガル物語

 

ゼイヌはセネガル人には珍しく無口だった。

その彼も含め、このシーベルは私のお気に入りの場所だった。

時間を忘れて、夜遅くまでいることもあった。

「もう、店を閉めるけど。」

ゼイヌは必要最低限のことしか私に話しかけない。

無口なゼイヌのその一言が聞きたくて、わざと最後まで居座っていたこともあった。

そんなある日の夜、ゼイヌが珍しく「サンドイッチを食べに行かない?」と私を誘って来た。

あまりの嬉しさに私は即答でOKした。

私はゼイヌともっとおしゃべりしてみたいとずっと思っていたからだ。

でもとっさに、また私がおごらされるんだろう、という懸念が込み上がった。

彼だけは良い印象のままでいて欲しい。

たかがサンドイッチ、されどサンドイッチ。

 

 

恋のはじまり

サンドイッチ屋に到着すると、店員は彼を見るなりオーダーも取らず、サンドイッチを作りだした。

ゼイヌはすかさず「二つ」と言った。

普段では見る事のできない彼の日常を見ている自分がちょっと特別な感じがして嬉しかった。

どこかワクワクして、とても新鮮な気持だった。

「ここのサンドイッチは最高だよ」と言うゼイヌに、心の中で「あなたもね」と反応して勝手に赤面している自分がいた。

サンドイッチが出て来た。

ゼイヌはポケットに手を入れてゴソゴソと小銭を取り出し、2人分のお金を払った。

そして、手に取った2つのサンドイッチのうちの1つを無言で私に差し出した。

セネガルに来て未だかつて経験したことない、まさかのおごりだった。

想定外の展開に心を許し、うっかりはしゃいでしまっている自分がいた。

私はこの瞬間、ゼイヌに対して完全に警戒心を忘れていた。

そしてこともあろうに、セネガル滞在残りわずかの所で、油断しないと決めていた気持ちに異変が起きてしまったのだ。

なんと、ゼイヌに対して特別な感情を感じ始めていた。

 

サンドイッチ

 

ファティマタセネガル物語 第4話につづく

 

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