ファティマタセネガル物語

ファティマタセネガル物語(13)〜何度も大嫌いになった第二の故郷〜

ファティマタセネガル物語は2004年にファティマタが経験したノンフィクションストーリーです。

ファティマタセネガル物語(1)はこちらから

 

つかの間の夢

仰向けになっているゼイヌの胸の上。

私はセネガルに来てからいつもこの瞬間を待ち望んでいた。

しかし、その瞬間ベンジーの階段を駆け上がる音が聞こえた。

私は、サッと起き上がり、元の椅子にすばやく戻った。

「お待たせぇぇぇ」 ベンジーは息を切らして、私たちにニコニコ顔でビールを差し出してくれた。

 

いつも私を励ましてくれるニコニコ。

今日はお休みしててよかったのに・・。

 

3人はまたビールを飲みながら、穏やかに流れる時間を楽しんだ。

 

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余韻とのギャップ

私はアパートに戻ってからも、ゴール島のテラスでの出来事を思い返していた。

また、あんな風にゼイヌと一緒にいたい。

少し気持ちが大きくなっていた私は、「去年のようにまた一緒にクラブに行きたい。」とゼイヌにおねだりしてみた。

あんなハプニングがあっただけに、ちょっとは期待していた。

しかし彼の答えは前と変わりなくぶっきらぼうに「金がない」だった。

 

そして続けた。 「カフェドロムっていう高級なクラブがある、そこは綺麗だし最高に楽しい。君と一緒に行きたいけど、金がない。」

 

そして相も変わらず、ゼイヌはテレビに視線を戻した。

 

「それって、いくらかかるの?」

 

私は、またゼイヌが誘ってくれることを期待していた。

 

「2~3万セファくらいかな。」

 

今回ばかりは、「私が出しますから、さぁ行きましょう。」という訳には行かない。

彼からお金を返してもらうまでは、お金に困っているフリをしなきゃいけないし、生活の負担は彼がするって言っていたのに、負担らしい負担をまだ見てない。

そういう素敵なクラブのために、日本から勝負服だってちゃんと用意して来た。

私は行きたい気持がMAXになっていた。

しかしここは、自分がお金を出したら負け。

グッとこらえた。

 

「そんなに高いの? 私もお金ないよ。」とりあえず言い返してみた。

 

「高くないよ、おまえ日本人だろ。金あるだろ。」

 

 

「えっ?」

 

耳を疑うほどショックだった。

ここで日本人扱いされるのは思ってなかった。

 

「だって、あなたがお金返してくれないから、無いのよ!!」

 

私は頑張って言い返した。

 

「俺なら金はあるよ。ただ、今ここに無い。クラブ行きたいなら貸してよ。ちゃんと返すから。」

 

「いくら貸して欲しいの?」

 

口をすべらし、言っちゃいけないセリフを言ってしまった。

彼とクラブへ行きたい気持が強すぎて、自分の意思をうまくコントロールできない。

ゼイヌはぶっきらぼうに言い返した。

 

「3万セファ(約6000円)。」

 

3万セファはかなり高い。

ここで簡単に貸したらいつでも金を貸せる女だと思われてしまう。

 

「クラブがそんな高いわけないし、そんなに貸せないよ。」

 

「じゃぁ、いくらなら貸せるんだよ」

 

これは、セネガルでの値段交渉の際によく聞く決まり文句だ。

私は返事に困り、妥当なところで「1万セファ(約2000円)。」と答えてしまった。

 

 「じゃ、1万貸して。」と彼は手を差し出した。

 

セネガルでは交渉で決定した金額を途中で辞退するのはルール違反。

私は引くにも引けず「んもぅ」という顔で渋々スーツケースから1万セファを取り出し、彼に渡した。

 

「これは俺のエントランス。おまえのは自分で出せな。」

 

やられたっ!

 

ここで抜けぬけと「はい、分かりました。」と言うわけにはいかない。

 

「お金ないから、私は行けないよ。」

 

心を鬼にしてそう切り返した。

 

彼はどう出るか。

 

ゼイヌは、その1万を握り絞めて立ち上がった。

 

「じゃあ、俺だけ行って来る。」

 

あまりの衝撃的な返答に、何も答えられなかった。

彼は大きく伸びをすると、サンダルを引きずる音を立てながら、部屋を出て行ってしまった。

ショックすぎて身動きできなかった。

 

もういい加減ジェットコースターの様に浮き沈みする自分の気持ちにうんざりしてきた。

この気持ち、一体誰にぶつければいいんだろう。

 

日本だったら真っ先に女友達に電話して、すぐにでもゼイヌの悪口を言ってスッキリできるのに。

そして「そんな奴やめちゃいなよ。」って言ってもらえる。

でもここセネガルでは愚痴を聞いてくれる友達はいない。

 

 

私はテレビの音がする居間へ行った。

ヤマがひとりでテレビを見ていた。

ヤマは私に気がつくと、唐突にも「お腹空いた。500セファ(約100円)くれない?」と言ってきた。

 

たかが500セファかもしれないが、タイミングがタイミングすぎる。

第一簡単に金くれって言われるたびにイラっとする。

 

「どいつもこいつも二言目には金くれかよ!」

 

私は日本語で言い放った。

この気持を誰にぶつけることもできない。

 

しょうがないよね、私、日本人だから。 こんな最低な国、早く帰ってしまいたい。

 

 

ファティマタセネガル物語 第14話へつづく

 

動画で見るセネガルこんなところ。

セネガルではなんでもかんでも歌にする。
私の本名(マナ)を連呼して何を歌っているかというと、
「マナはすごいやつだ、これだけすごいやつはいないぞ。」ととにかく褒め称え、
その見返りとしておひねりちょうだいね!という流れ。
ただ「お金ちょうだい。」と言うだけではなく、これ以上ないほど褒めまくってからのおねだりなので、かわいいっちゃかわいいが、何て言ってるかわからないとあまり意味がない。

 

 

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