ファティマタセネガル物語(1)はこちらから

 

カミサマのイタズラ

私はゼイヌに恋をしてしまった。

気がつくと彼のことばかりを考えていた。

でも私はあと2日しか滞在期間がなかった。

このまま日本に帰ってしまえば、そのうちゼイヌのことも忘れる。

私がセネガルに来た目的はダンスの習得であり、恋愛ではない。

どんなイケメンから口説かれてもその信念をぶらすことなく過ごして来た。

このまま帰れば、私の目的は達成される。

しかし、ものすごく心が揺れていた。

どうせもう帰ってしまうのなら、セネガルの最後の夜くらい、彼と一緒にいたい。

それが本心だった。

もう、頭の中は彼でいっぱいだった。

帰国の時間は刻一刻と近づく。

もう居ても立ってもいられない。

私の足はゼイヌのいるシーベルに向かっていた。

後は野となれ山となれ。

いつもと変わりないシーベル。

中に入ると、ゼイヌはいつものように自分のデスクに座りヒップホップを聞いていた。

私はゼイヌのデスクの前に立った。

ゼイヌはいつもの調子で私に「サヴァ?」と挨拶をしてきた。

私も挨拶を交わし、私はすぐに本題に入った。

「今夜、私と一緒にクラブに行きませんか?」

 

 

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肉食女子

しばらく間があった。

100%OKをもらう自信があった。

なぜなら、ここはセネガル。

いろんな人が私に口説いて来たセネガル。

断られるわけがない。

 

するとゼイヌは、「無理だよ」とあっさり断った。

あれ?

想定外の返答に自分の笑顔を保つのがやっとだった。

外国人の女性からの誘いにはセネガル人は絶対に断らないという持論が崩された。

私の聞き違いかもしれない。

気を取り直してもう一度聞き返した。

「今夜、私と一緒に、クラブに遊びに行きませんか?」

やはり、先ほどと同じ、返事はNOだった。

ゼイヌが断った理由は、タクシー代や二人分のクラブ代、飲み物代などを自分が出せないということだった。

私の頭の中では2人でデートするシミュレーションは出来ていた。

このまま「はい、そうですか」とは引き下がれない。

もうすぐ帰る焦りもあってか、女性として言っちゃいけない一言を放ってしまった。

「お金は私が出します!」

 

セネガルでのデート

そしてデートが決行が決まった。

深夜0時。

日本から用意して来た勝負用の服がやっと役に立つ時が来た。

私は市場で買った香水をたっぷり振って身支度を整え、ゼイヌの働くシーベルに向かった。

辺りは真っ暗。

数本しかない電灯に紛れてシーベルの部屋の明かりが夜道を照らしていた。

 

0109まぶしい月

 

ゼイヌは私の姿が見えると、パソコンの電源を1台ずつ落とし戸締まりを始めた。

今日に限ってはその戸締りの時間がやけに長く感じた。

入り口の扉を締め、さらには鉄で出来た表の扉を閉め、大きい南京錠を二つかける。

ゼイヌがひとつ掛けている間、もうひとつを「持ってて」と渡された。

こんな何でもないことでも、私は心の中で「共同作業だ。」と特別な意味を持たせて微笑んだ。

戸締まりが終わるとゼイヌは、遠くから走って来たタクシーに向かって「プスーーッ!」と歯の間から摩擦音を鳴らして、タクシーを止めた。

セネガル人は人の注意を引く時や誰かを呼び止める時、このように歯の間から息を強くだし、音を鳴らす。

彼らは習慣からか、その音が聞こえればどんなに遠くにいても反応する。

ゼイヌは止まったタクシーの運転手と値段交渉を終えると、後部座席の扉を開いて私を見た。

私に続いてゼイヌもタクシーに乗り込むとタクシーはゼイヌが勧めるクラブへ向かった。

着いた所はクラブというより、雰囲気のよいバーという感じだった。

 

bar dakar

 

ソファーのあるテーブル席に座った。

最初はとくに話すこともなく沈黙が続いた。

ゼイヌの方から突然会話を切り出した。

将来の夢について。

ゼイヌは大学生だった。

大学を卒業した後はロースクールに通い、法律を勉強して弁護士になりたいと語った。

私はその時、あることを試みた。

私を口説いてくるセネガル人たちに必ずする質問をゼイヌにもしてみた。

「日本に住んでみたいと思う?」

この質問はその男の本質を探る重要なポイントになる。

私に近づいて来る男性が、私を見てるいのか、もしくは海外進出を見ているのか。

ゼイヌの答えは、「NO」だった。

セネガルに貢献したいから海外へは行きたくないという素晴らしい返答だった。

私の審査は合格である。

この人なら心を許しても大丈夫。

そんな自分に都合のよい判断でさらに気持が舞い上がっていた。

 

ちょうどその時、今までかかっていたR&Bがセネガルポップスに変わった。

ユッスンドゥールのウォロフ語の歌だった。

ゼイヌがおもむろに私に尋ねた。

「この歌詞なんて言っているか分かる?」

「え?わからないよ。」

 

0109夜空④

 

「これはね、相手をどんなに想っていても、それを伝えることをしなければ、相手は一生知らないままだ、って言っているんだよ。」

 

その一言で私の心臓は打ち抜かれた。

 

 

ファティマタセネガル物語 第5話につづく

 

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