ファティマタセネガル物語は2004年にファティマタが経験したノンフィクションストーリーです。

ファティマタセネガル物語(1)はこちらから

 

 

ウミの別の人格
私はあまりの衝撃に息が止まった。

私はウミの顔を凝視した。

何言ってるの?この人。

私は声を張り上げた。

 

「してません!彼女の言ってることは嘘です。」

 

するとベンジーがもういちどウミに尋ねた。

 

「お前は嘘を言ってるのか?」

 

「嘘じゃないわ、本当よ。私は彼女たちにレイプされたの。」

 

ショックだった。

昨日までのウミの優しく明るい面影はひとつもない。

ウミはまるで別人の顔だった。

私は現実なのかなんなのか分からなくなる程、胸ぐらをギューとわし掴みされたような感覚だった。

 

「そんなことやってません! ウミ、ちゃんと本当のことを言って!!」

 

私はそうわめいて、ウミの顔をこれ以上ない憎しみの目で睨み付けた。

ベンジーは分厚い本を手に取って、私に振りかざした。

 

「ウミは嘘は付かない。こいつはムスリムだ。コーランを前にして、嘘をつけるわけがない。」

 

そして続けた。

「これは犯罪だ。俺が警察に通報したら、お前は捕まる。ただし、口止め料を払うなら考えてやってもいい。」

 

私がレイプしたというのはウミが言っているだけで、証拠はない。

捕まるわけないし、こんなバカげた話し第三者に入って欲しいくらいだった。

「だったら警察に行きましょう。」と私は切り出した。

私は捕まるようなことは何もしてない。

するとベンジーが答えた。

 

「よし、いいだろう。君の好きにしていい。ただし金を払えば、この件はここで終わりにしてやる。」

 

私はとりあえず部屋を出た。

頭がおかしくなりそうなくらい悔しかった。

ヤマにこの話をした。

ヤマはビックリして、言った。

「全部あの女の仕業だよ。私をベンジーに近づかせないためだよ。」

そして、続けた 「とりあえず、警察は行かない方がいい。あんた日本人だし、セネガルの警察は野蛮だから、釈放を名目に金を取られるだけだよ。ここは諦めてベンジーにお金を払った方が賢いよ。警察に行って話が大きくなったら、ここでワークショップが出来なくなるから。」

 
ヤマの復讐
私は悔しすぎて涙が出た。

そして、ヤマは何かを企てている目つきで言った。

 

「今に見ててよ。私、絶対復讐するから。」

 

そう言うと、ヤマはほくそ笑んだ。

ヤマの様子を見る限り、ヤマが1番恨んでいるのは、ウミのようだった。

私はヤマに尋ねた。

 

「なんで、ウミがそんなウソをつく必要があるの?」

 

「知るか。この家に他の女がいることが気に入らないか、それか、金が目当てだろ!」

 

つい先日まではヤマはベンジーの言いなりで私と金銭の交渉をしてた。

私にとっては、ヤマも敵だった。

しかしたった今状況は変わった。

ヤマはベンジーから追い出されたのだ。

それがウミの仕業だったとしたら、一番許せないのはウミだ。

そして、ヤマはさっそくウミに対して復讐を企てていた。

 
ヤマの反撃
翌日。

私が部屋でボーっとしていると、ヤマが駆け込んで部屋に入って来た。

ヤマは笑っていた。

「見てて。」

そういうと、ヤマは部屋のドアを閉めた。

私が「何?」と聞くと、ヤマはニヤニヤしながら「いいから、いいから」とマットに座り出した。

ヤマは聞き耳を立てて部屋の外で何かが起こることを今か今かと待っているようだった。

突然、部屋の外でベンジーのわめき散らす声とウミの甲高い悲鳴が聞こえた。

外ではベンジーの他に男性の声も聞こえた。

かなりの勢いでベンジーとウミがやり合ってる様子だった。

ヤマはドアの向こうから聞こえてくるその声に耳を傾けながら肩を揺らして笑いだした。

ヤマは「してやった。」という勝利に満ちたような顔をしている。

私には部屋の外で何が起こっているかさっぱりわからなかった。

ヤマがドアをそっと開けてその様子をのぞき見した。

私もヤマと並んで、ドアの隙間からその様子をのぞいた。

そこには、言い合いしてるベンジーとウミ、その他に若い男性が呆然として立っていた。

ウミはその男性を指さし、「私はこの男なんて知らないわ!」とベンジーに叫び、そして男性に向かって「あなた、私の事知ってるの?」と続けた。

その男性はうろたえながらも「知りません。」と答えた。

しかし、興奮してるベンジーの耳にはウミやその男性の声は届かなかった。

ベンジーはヤマに暴行を加えた時の顔と同じ顔になっていた。

男性はうちらが覗き見していることに気がついた。

ヤマはベンジーやウミから見えないように、その男性に手招きをして、こちらの部屋に来るよう誘導した。

その男性は言い合いになっているベンジーとウミの目を盗んで、そっとその場を抜けて私たちの部屋へ逃げ込むように入って来た。

ヤマはその男性を私たちの部屋に入れるとドアをパタンと閉めた。

「何が起こったんだかさっぱり分からない。」とその男性は困惑した表情を浮かべ、私たちに状況を説明しはじめた。

「ウミという女から電話が来て、「あなたの助けが必要だから今すぐ部屋に来て。」と言われたんだ。僕はウミという女を知らないし、人違いだと思っていたけど、あまりに懇願するから、彼女の言うとおりここに来てみたんだ。そして彼女のいう部屋に入ったんだ。僕が「電話で僕を呼んだのは君かい?」と話しかけた瞬間、いきなりトイレからあの男が出て来てあの女に殴りかかったんだ。僕は必死で止めたけど・・・、何が起こったんだかさっぱり分からない。」

ヤマは笑いながら「お気の毒さま。」と彼に言った。

彼は肩をすくめると、ため息をついてマットに座った。

外ではまだベンジーとウミがもめていた。

ベンジーは暴力をふるっているのか、時よりウミの叫び声が聞こえた。

何か物音がする度、私とその男性は顔を見合わせて目を丸くしたが、ヤマだけは笑っていた。

しばらくして、ようやく静まり返った。

男性が何かしゃべろうとすると、ヤマが「シッ」と口止めして耳を澄ました。

私たちも便乗して耳を澄ました。

ドアの外からウミの啜り泣く声が聞こえた。

ヤマは満足気に私の顔を見ると、右手の平を私の方に向けて高く掲げて来た。

私は、なんとなく気が進まなかったが、パチッとヤマの手をタッチした。

ヤマは「あとでちゃんと説明するから。」とウィンクして、「ハァ~」と大きなあくびをして、マットに横になってケータイをいじり始めた。

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ファティマタセネガル物語 第27話につづく。