ファティマタセネガル物語は2004年にファティマタが経験したノンフィクションストーリーです。

ファティマタセネガル物語(1)はこちらから

 

交渉不成立
私は落ち着いたら、ベンジーとツアーのことで相談がしたかった。

去年、ゴール島のペンションを自由に使っていいと言われていた。

そのことについてベンジーに早いところ確認しないと落ち着かない。

去年はタダで、と言っていたが、それがタテマエだってことくらい想像できている。

いくらぐらいで借りられるのか、そもそも本当に借りられるのか、それが決まってからじゃないと話が先に進まない。

私はベンジーの部屋のドアをノックして中へ入ると、ベンジーはベッドの上で横になっていた体を起こして、いつもの調子で両手を広げて招いてくれた。

私はベンジーの横に座ると、ちょっと深呼吸をしてペンションの話を切り出した。

ベンジーはこれから私が何を話そうとしているのかすぐ分かったらしく、私の話を遮って言った。

 

「そういうことは全部ヤマと話してくれ。ヤマが全部決める。ヤマの言うことは全部僕の言う事と一緒だ。」

 

と立ち上がって部屋を出て行った。

ベンジーの態度が不可解だった。

ベンジーが私と面と向かってお金の話をしたがらないのはなぜだろう。

 
ガールズトーク
私がベンジーの部屋を出ると、ウミが台所からお玉を持ちながら顔を出し、私に手招きした。

台所へ行くと、さっき作っていたスープの味見をさせてくれ、私が親指を立てて「おいしい!」と言うと、ウミは満足そうに笑いそして言った。

 

「もうちょっと煮込めば出来上がり。それまであなたの部屋でおしゃべりしましょ!」

 

052
 

 

ウミは私の部屋に入ると、私が日本から持ってきた大きな鏡を手に取って、それを見ながら自分の髪の毛を整え始めた。

 

「この鏡ステキね。」

 

私はセネガル人定番の「ちょうだい」を言われるものだとちょっと構えていたが、ウミはその鏡を元の場所に置いて、マットの上に座っていいか尋ねてきた。

まず、セネガル人から許可を求められたことに驚いた。

しかも鏡を褒めて「ちょうだい」とも言わず元の場所に戻した。

図々しいのが国民性だと思っていたが例外もいるんだ。

私はウミがますます好きになった。

ウミはマットの上に寝そべった。

私もその隣に寝そべった。

ヤマとはまた違う感覚。

修学旅行のガールズトークの体勢だ。

案の定、お互いの好みのタイプや現在彼氏がいるのかと言った会話になった。

ちょうど、話が盛り上がっている時に部屋の外でベンジーがウミを呼んでる声が聞こえた。

ウミは「んもうっ」っと言った感じで立ち上がり、「続きはまたこんどね。」と部屋を出て行った。

ちょうど、ウミと入れ替わるようにして、ヤマが帰って来た。

ヤマは私を見ると、得意げな顔でケータイをチラつかせた。

そして一言「疲れたぁぁ」と伸びをすると、私にタバコを吸うジェスチャーをして部屋を出て行った。

 
ナイショ話
私が暇をもてあまし居間の方へ出て行くと、ベンジーがウミに何か熱く話していた。

ベンジーが私の姿に気が付くと、ウォロフ語からフランス語に切り替えた。

私は気が付かない振りをしたが、フランス語が全く分からない私にはベンジーのその行為がどんなことかはすぐ察しがついた。

ベンジーは私に聞こえちゃまずいことを話しているようだった。

 

ウミはどんな時でも私が不快な思いをしないよう、いつもケアをしてくれた。

掃除の時も食事を作っている時も楽しそうに歌を歌い、私の姿を見かけると下手くそなダンスを踊っては照れ笑いをした。

ベンジーは相変わらず部屋にこもってばかりいたが、私はウミのおかげでこの家の生活がとても楽しかった。

ヤマはいつでもマイペースだった。

去年と変わらずマットの上でケータイをいじっている。

ヤマが買ってきたケータイは私が所持することなく、ずっとヤマが持っていた。

「約束が違う。」と取り上げてもヤマ宛の着信が多く、ヤマにケータイを渡すとそのまま通話をしながらどっかに行ってしまうパターンが多かった。

セネガルで使うケータイは通話をする際はプリベードカードを購入し、買った金額分だけの通話ができる。

そのプリベードカードのことをセネガルではクレディと呼んでいた。

クレディの残高がないと着信はできても、こちらからかけることはできない。

私がクレディを買ってチャージしても、ほとんどヤマの通話で使い切ってしまい、私がかけたい時には残高がなくなっていることが多かった。

ヤマは相変わらず遠慮がなかった。

 
話が違う・・・
ワークショップの準備のために3週間のゆとりを持ってセネガルに来ても、なんの交渉も出来ないまま1週間が過ぎようとしていた。

ヤマとは毎日一緒だったが、いつも悪ふざけのケンカばかりで事務的な真面目な話しになりにくかった。

宿のことでちゃんとヤマと話したかった。

金額の交渉をしないと準備に取り掛かれない。

まずはゴール島の宿について話さなければいけない。

マットの上でケータイをいじっているヤマの隣に座り、宿のことで話しかけた。

ヤマは小声で宿の金額を提示してきた。

その金額を聞いて耳を疑った。

それは、想像を超える金額だった。

参加費として集めた経費では到底払い切れない。

去年の別れ際では、ベンジーは宿についてはお金はいらないと言っていた。

それが莫大な金額に膨れ上がっている。

 

「やっぱり・・・。」

 

所詮ここはセネガル。

全く予期してなかったけわけではないが、それでも、想像以上に金額が大きかったことに落ち込んだ。

 

「そんなの払えない。」

 

私はゴール島の宿を当てにしてツアーを考えていたため、そこがどうにかならないとアウトである。

ヤマに何を言っても無駄だった。

ヤマはベンジーじゃない。

宿の値段交渉はヤマの一存では話の進まない事だった。

ベンジーは最初から私とモメることを避けるためにヤマに伝言させたのだった。

私の困った顔を見て、ヤマの打開策はこうだった。

 

「この部屋に泊まるんじゃダメなの?」

 

予定と大幅に変わるけど、宿がないよりまだマシだった。

私とあと日本人3人だけなら、どうにか泊まれることは可能だ。

この家ならウミもいるし、お手伝いさんをウミにお願いできれば楽しいかもしれない。

そして、ここの部屋がいくらで借りられるのか尋ねた。

ヤマはベンジーに聞いて来る、とその場を離れた。

ヤマを待っている間、怖かった。

宿代をゼロで済ませようなんてさらさら思ってないが、ベンジーの言っていることが去年と違うことが先行きが不安になる。

一体、何て言われるか・・。

ヤマがベンジーの元から戻って来て、提示してきたこの部屋の金額も決して安くなかった。

でも、もう他に解決策はなかった。

宿がなければ参加者を迎え入れることができない。

それに、この馬鹿げたベンジーとの伝言ゲームを今すぐ終わりにしたかった。

私は仕方なく了承し、早く決めてしまいたいその焦りから、ヤマにその提示された金額を渡した。

想定外の出費に気持は落ち込んだが、とりあえず宿は確保できたのでその安心感はあった。

 

そして、ウミにお手伝いさんをしてもらいたいことも相談してみた。

ウミはとても喜んでいたが、「ベンジーに聞いてからじゃないと引き受けられない。」と少し顔を曇らせた。

ウミはすぐにベンジーに許可を求めに行き、OKをもらって私の元へ帰ってきた。

しかし、今すぐにウミにお給料を支払うことが条件だった。

そして、条件どおり私はウミが提示してきたお給料を支払った。

 
大きな失敗
私はすでにここで大きなミスを犯していた。

セネガルでは支払いを先に全額清算することはまずしない。

最初に半額、そして仕事が終わったら残りの半額というやり方が普通だった。

払ったお金を持ち逃げされた時、先に渡した方にも非がある、というのがセネガルの考え方だった。

日本で平和に暮らしてる私はそんなことすっかり忘れて、先に全部支払ってしまったのだ。

 

Exif_JPEG_PICTURE
 

ファティマタセネガル物語 第25話へつづく

 
映像で見るセネガルこんなところ
前回に引き続き、セネガルツアーダンス合宿の2010年バージョン。
ツアーの内容は進化を遂げて、Tシャツと横断幕まである!
ダイジェストというよりクリップみたいで懐かしい。
やっぱり、セネガルは音楽とダンスだねぇ。